所得税とは、課税対象となる個人や法人などが実際に税負担を受け持つことができる能力である担税力の源泉を、書と寿、消費及び資産と区分した場合に個人の所得に対して課される税金のことです。
狭義には
個人の所得に課税される税金(国税)のことを指しており、個人所得税とも呼びます。
この税金に係る実体法として、日本では所得税法が存在します。
広義には
狭義の所得税のほか、国税(中央税)における法人の各事業年度の所得に対して課せられる法人税や地方税における住民税、事業税なども含んでいます。
ここでは、狭義の所得税について解説していきます。
所得税率について
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%~45%の7段階(平成19年分から平成26年分までは5%~40%の6段階)に区分されています。
課税される所得金額(1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に対する所得税の金額は、以下の速算表を使用すると簡単に算出できます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、『課税される所得金額』が1,000万円以下の場合には
1,000万円×0.33−153万6,000円=176万4,000円
となります。
ちなみに、平成19年分から平成26年分までは、以下の表で求めることが出来ます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
所得税額の計算式について
所得税の確定申告においては、年間の総合課税分の所得と申告分離課税分の所得を分けて集計したうえで、それぞれの税率を適用します。

損益通算において、総合課税の不動産所得・事業所得・譲渡所得及び分離課税の山林所得の損失は、他の所得から控除(損益通算)することが出来ます。
ただし、不動産所得及び譲渡所得の一部の損失については損益通算できません。
また、土地建物などの譲渡については、原則損益通算が出来ません。
居住用不動産の譲渡損失については、一定の要件を満たすことにより損益通算や繰越控除を出来ます。
株式等の譲渡等においては、上場株式等の配当及び利子を含みます。
上場株式の配当については、一定の要件を満たすことで総合課税、申告不要制度も選択できます。
所得税の控除について
所得税の控除は、引くことができるものによって
- 所得控除:所得金額から引くことができるもの
- 税額控除:課税所得金額に税率を掛けて算出した税額から、一定の金額を差し引くことができるもの
に分けられ、性質によって
- 人的控除:人的要因(配偶者・扶養など)により差し引くことができるもの
- 物的控除:人的控除以外のもの
に分けられます。
所得税の所得控除について
- 雑損控除
・(差引損失額)−(総所得金額等)×10%
・(差引損失額のうち災害関連支出の金額)−5万円
のうち、いずれか多い方の金額となります。
- 医療費控除
医療費控除の金額は、
(実際に支払った医療費の合計額−保険金などで補填される金額)−10万円
で計算した金額(最高で200万円)となります。
- 社会保険料控除
控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金等から差し引かれた金額の全額となります。
- 小規模企業共済等掛金控除
控除できる金額は、その年に支払った掛金の金額となります。
- 生命保険料控除
新契約(平成24年1月1日以降に締結した保険契約等)に基づく場合の新生命保険料・介護保険料・新個人年金保険料の控除額(1)は
年間の支払保険料 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
の計算式に当てはめて計算した金額となります。
旧契約(平成23年3月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の旧生命保険料・旧個人年金保険料の控除額(2)は
年間の支払保険料 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 1000,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
の計算式に当てはめて計算した金額となります。
新契約と旧契約の双方に加入している場合の控除額(3)としては、一般の生命保険料控除の控除額は
- 旧生命保険料の控除の年間支払保険料等の金額が6万円を超える場合
→旧生命保険料控除の年間支払保険料等の金額について(2)で計算した金額(最高5万円) - 旧生命保険料控除の年間支払保険料等の金額が6万円以下の場合
→新生命保険料控除の年間支払保険料等の金額について(1)で計算した金額と旧生命保険料控除の年間支払保険料等の金額について(2)で計算した金額の合計額(最高4万円)
個人年金保険料控除の控除額は
- 旧個人年金保険料控除の年間支払保険料等の金額が6万円を超える場合
→旧個人年金保険料控除の年間支払保険料等の金額について(2)で計算した金額(最高5万円) - 旧個人年金保険料控除の年間支払保険料等の金額が6万円以下の場合
→新個人年金保険料控除の年間支払保険料等の金額について(1)で計算した金額と旧個人年金保険料控除の年間支払保険料等の金額について(2)で計算した金額の合計額(最高4万円)
となります。
最終的な生命保険料控除は、(1)~(3)の各控除額の合計額となります。
ただし、この合計額が12万円を超える場合には、生命保険料控除額は12万円となります。
- 地震保険料控除
その年に支払った金額に応じて、以下の表に基づいて計算された金額が控除額となります。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
(1) 地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
(2) 旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超 20,000円以下 | 支払金額×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(1)・(2)両方がある場合 | − | (1)・(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円) |
- 寄附金控除
寄附金控除の金額は、次の計算式で算出した金額のいずれか低い金額から2,000円引いたものとなります。
・その年に支出した特定寄附金の額の合計額
・その年の総所得金額等の40%相当額
- 障害者控除
障害者控除は、以下の表の通りとなります。
区分 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
ちなみに、同居特別障害者は、特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方を指します。
- 寡婦控除・寡夫控除
寡婦控除・寡夫控除の金額は、以下の表の通りとなっています。
区分 | 控除額 |
一般の寡婦 | 27万円 |
特別の寡婦 | 35万円 |
寡夫控除 | 27万円 |
- 勤労学生控除
勤労学生控除の金額は、27万円となります。
- 配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除の控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額及び控除対象配偶者の年齢により、以下の表の通りとなります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
ちなみに、老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の方を指します。
配偶者特別控除の控除額は、控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額及び配偶者合計所得金額に応じて、以下の表のようになります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配偶者の合計所得金額 | 38万円超 85万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
85万円超 90万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
90万円超 95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
95万円超 100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
100万円超 105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
105万円超 110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
110万円超 115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
115万円超 120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
120万円超 125万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
- 扶養控除
扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無等により、以下の表の通りとなります。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
- 基礎控除
基礎控除の控除額は、38万円となっています。
所得税の税額控除について
- 配当控除
配当控除の計算式は、それぞれの場合に応じて以下の通りとなります。
1:その年分の課税総所得金額等が1,000万円以下の場合
配当控除の額=(イ)+(ロ)
イ:剰余金の配当に係る配当所得の金額×10%
ロ:証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×5%
2:その年分の課税総所得金額等が1,000万円を超え、かつ、課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1,000万円以下の場合
配当控除の額=イ・ロ・ハの合計額
イ:剰余金の配当に係る配当所得の金額×10%
ロ:証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から 1,000万円を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額×2.5%
ハ:証券投資信託の収益の分配に係る剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち(A)を超える部分の金額×5%
3:課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1,000万円を超える場合(4に該当する場合は除く)
配当控除の額=イ・ロ・ハの合計額
イ:剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1千万円と証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額の合計額を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額×5%
ロ 剰余金の配当等に係る配当所得のうち、(A)を超える部分の金額×10%
ハ 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額×2.5%
4:課税総所得金額等から剰余金の配当等に係る配当所得の金額と証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額の合計額を差し引いた金額が1,000万円を超える場合
配当控除の額=イ・ロの合計額
イ:剰余金の配当等に係る配当所得の金額×5%
ロ:証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×2.5%
- 住宅借入金等特別控除
2014年4月から2021年12月までの間に入居した場合、控除限度額は
控除限度額=年末ローン残高×1%
となります。
上限は40万円ですが、住宅取得時の消費税が8%以外の場合は20万円となります。
- 政党等寄附金等特別控除
政党等寄附金等特別控除の控除額は
政党等寄附金等特別控除額
=(その年中に支払った政党等に対する寄附金の額の合計額−2,000円)×30%
となります。
- 外国税額控除
居住者に係る外国税額控除額の計算は、それぞれの場合に応じて以下の金額となります。
- 控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額に満たない場合
→控除対象外国所得税の額 - 控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合
→所得税の控除限度額と、次のイ又はロのいずれか少ない方の金額の合計額
イ:控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた残額
ロ:復興特別所得税の控除限度額
また、所得税の控除限度額及び復興特別所得税の控除限度額は
- 所得税の控除限度額
=その年分の所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額) - 復興特別所得税の控除限度額
=その年分の復興特別所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
となります。
所得税法について
所得税法とは、狭義の所得税である『個人の所得に対する税金』について定めた法律となっています。
日本は、『何人も法律の根拠がなければ、租税を賦課されたり、徴収されたりすることはない』とする考え方である『租税法律主義』を採用しています。
それにより、所得税の主な法規はこの所得税法によって定められています。
その一方で、租税特別措置法による修正が採られていることも多く、特に個人が金融に資する場合や不動産を譲渡する場合には、租税特措法を抜きで正確な課税関係を語るのは、ほぼ不可能です。
理念としては、純資産増加説・包括的所得概念に基づいています。
建前としては、所得の合計額をまとめて課税する総合所得税の方式を採用しています。
一方で、所得分類の存在など、源泉ごとに所得を分け、それぞれに異なった税率を適用する分類所得税的な要素も存在しています。
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